No.1たくさんの大人と時間を共有することが若者には大切なのではないだろうか?
暗やみ本屋ハックツ発起人(ツルハシブックス元店主)西田 卓司
暗やみ本屋ハックツをはじめるきっかけとなったのは2002年のこと。
私は勤めていた会社を辞めて無職だった。
今後の進路に悩んでいた。
そんな時、偶然知り合ったお母さんに息子の家庭教師を頼まれた。
ただ、中学3年生の彼は、不登校でずっと学校に行っていなかった。
彼はとてもおとなしく、あまり話をしない子どもだった。
なので私はすぐには彼に勉強を教えなかった。
毎日のように彼とただ一緒にゲームをしたり、くだらない話をした。
すると彼は少しずつ笑顔が増えて元気になっていった。
そうして勉強も自ら進んでするようになり、彼はめでたく受験に合格して高校生になった。
私のような無職で将来に悩む者でも彼の力になれたのだ。
私はとても嬉しかった。
彼の周りには立派な大人や先生がいるのに、どうして私みたいなプータローが彼を元気にできたのだろうか?
もしかしたら子どもにとって、たくさんの大人と時間を共有することが大切なのではないだろうか。
家庭や学校など限られたコミュニティとは別に、いろんなタイプの大人と出会う場が子どもには必要ではないだろうか。
わたしはこの時の家庭教師の経験からそう強く思うようになった。
その10年後、私は新潟市西区内野町で小さな本屋をはじめた。
そこにあの時の思いを込めて、地下に古本コーナーをつくった。
これが初代の暗やみ本屋ハックツである。
そして今回、縁があってブックスタマ上石神井店(東京都練馬区)の一部をお借りして、上石神井で暗やみ本屋ハックツをやらせてもらえることとなった。
ここには本を寄贈した大人とそれを買った子どもが繋がれるように、たくさんの工夫がされている。
大人と子どもが時間を共有する場だ。
そして1冊の本を通して、子どもたちの世界がぐんと広がっていくのだ。